物理工学コースからのおしらせ


R05年度 物理工学 談話会開催について

物理工学ユニットでは、以下のように談話会を 対面形式で開催させて頂きます。


講演者:宮武知範 (上原研究室 博士課程後期3年 日本学術振興会・特別研究員DC1)
演題: 高温超伝導候補物質R4Ni3-xMxO8 (R : 希土類, M : 遷移金属) の合成と物性測定
日時: 2023年7月24日(月)13:00 -
場所: 総合研究棟 W202室

概要:
R4Ni3O8 (R = La, Pr, Nd, Sm) は二次元NiO2面を含み、銅酸化物高温超伝導体(HTSC)と同じ結晶構造を持つ[1]。
またNiの電子配置がHTSCにおけるCuO2面のCuイオンと同じ3d9/38混合原子価状態にあり、HTSCと同様にNi 3dx2-y2 軌道が電気伝導を担う[2]。
これらの点から高温超伝導発現が期待される物質であるが、いまだ超伝導は報告されていない。
Ni酸化物では、本系と同様にNiO2面を持つ層状物質R1-x(Sr,Ca)xNiO2, Nd6Ni5O12 薄膜におけるTc ~ 15 Kの超伝導[3,4]、NiO6八面体を持つRuddlesden-Popper相La3Ni2O7単結晶の高圧下 (> 14 GPa) におけるTc ~ 80 Kの超伝導[5] が報告されており、適切な電子状態に調整することで高温超伝導の舞台となることが示されている。
その詳細な超伝導特性の解明およびHTSCとの物性比較のためにバルク試料における大気圧下での超伝導化が望まれているが、いまだ実現していない。

我々はこれまでR4Ni3O8に対して、硫黄Sによるintercalate - deintercalate処理(S処理)により過剰酸素を除去し、本系の本質である金属伝導を報告してきた[6,7]。
形式価数 +1.33 (Ni 3d8.67) であるNiの電子数をHTSCの最適ドープである3d8.85に近づけることが本系の超伝導発現に重要であると考えられる。
そこで、R3+ サイトにCe4+ をドープしてキャリア調整を試みたが、物質合成の困難さから十分なドープは実現していなかった。

本研究では、R元素の最適化を行い過剰酸素の十分な除去を実現すること、およびNiサイト・Oサイトへの元素置換によりキャリア調整を行うことを目指した。
R元素のイオン半径に対する化学圧力印加と過剰酸素除去のトレードオフの中でR元素としてPrを用いるのが最適と結論した[8]。
O2-へのF-ドープによりS処理をしない試料においても金属化に成功し、Niへの最適なキャリア調整が示唆された。
Niサイトへの3d遷移金属M = Ti4+, Cr3+, Co2+, Cu+ ドープでは、(完全ではないものの) ドーパントMのサイト選択的置換によるNiO2伝導面の維持、およびNiへのキャリアドープを示唆する結果が得られた。
現状、2 Kまで超伝導は確認されていない[8,9,10]。当日は上記の実験結果の詳細について報告する。

ポスターはこちらをご覧ください。
世話人:上原政智